FACULTY OF INTERNATIONAL STUDIES
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関係者と学生の声

関係者と学生の声

国際協力機構(JICA) 山本 美香 青年海外協力隊事務局長

国際協力機構(JICA) 山本 美香 青年海外協力隊事務局長

青年海外協力隊は1965年に発足し、今年52年を迎えました。これまで世界の約90ヵ国に5万人を越えるボランティアを派遣しています。

その中で、拓殖大学出身の方々の青年海外協力隊参加実績について確認すると、1960年代に既に5名の方が、ケニア、インドネシア、マレーシア、シリアといった国々へ派遣されていて、以降、これまで累計で102名の方が世界各国へ派遣されています。派遣された分野も、農業、教育、スポーツ、保健衛生など幅広い分野に渡ります。今回の連携プロジェクトに関係する農業分野での派遣実績も、14名となっています。

農業分野は、途上国でもニーズが非常に高い一方、日本における農業人材の不足などにより、近年ボランティアの確保が難しくなっています。特に若い世代の募集者が減少傾向にあります。そのような状況下で、拓殖大学には国際学部に農業総合コースがあり、実習を通じた実践的な教育に力を入れているとうかがっています。これは大学の知見を、ネパールの農業を通じた農村活性化に活かしていただけるものと確信しています。
キソル・チャンドラ・カナル博士

キソル・チャンドラ・カナル博士

Nepal Area Research Center所長
トリブバン大学講師
ネパールの農村に、拓殖大学卒業生が青年海外協力隊員としてきてくれることを、たいへん嬉しく思います。

今ネパールに大きな問題があります。それは、若者たちが次々と海外に出稼ぎに行ってしまうという問題です。ネパールのGDPは毎年大きく成長していますが、それは国の産業が発達したためではなく、海外に出稼ぎに行った若者たちからの送金のためです。本当は、彼らが国に残り、自国の発展のためにがんばってくれることが理想です。しかし、農村ではお金を稼ぐ手段がありません。産業は農業しかなく、その農業も、十分な稼ぎを生み出せていません。そのため、若者たちは海外へと行ってしまっています。

この問題を解決するためには、農業を元気にすることが一番重要です。農業でお金を稼げるようになれば、若者たちは帰ってきます。

拓殖大学で農業を学んだみなさんには、大いに期待しています。現地の村人に教えるというスタンスではなく、村人たちと一緒に悩み、考え、行動することで、村全体に大きな刺激を与えてくれたら、ありがたいです。
拓殖大学国際学部 岡田 実 教授(国際協力分野)

拓殖大学国際学部 岡田 実 教授(国際協力分野)


現地の人々と共に暮らし、共に働き、共に考える
※留学生とともに現地調査をする岡田 実教授 (右から3人目)
成功している国際協力の現場には、必ず素晴らしい「人」がいます。「人」が「人」を動かし、「人」と「人」が相互作用し、うねりとなって地域の発展につながっていくのです。私がかつていた中国では、青年海外協力隊員のことを「青年志願者」と呼んでいました。「志」を持った若者が奥深い地方に入って行き、現地の人々と共に暮らし(同生活)、共に働き(同工作)、共に考える(同思考)、という「三同主義」の理念の下、現地の人々と信頼関係を構築していました。

いよいよ始まるネパールでのプロジェクト。みなさんも、ネパールの人々と共に暮らし、共に働き、共に考えてください。そして「国際的な視野を持ち、何事にも積極的にチャレンジし、国内外の人と恊働して問題を解決することのできるタフな人間力を持ったグルーバル人材(=『拓殖人材』)」になることを期待しています。社会貢献・ボランティア推進委員会の先生方は、そうした皆さんと「志」を共にし、サポートしていきます。
拓殖大学国際学部 矢口  優 教授(国際協力、経済学分野)

拓殖大学国際学部 矢口 優 教授(国際協力、経済学分野)


国際学部での学びを実践に!
※バングラデシュ農村の女性コミュニティ集会で研究プロジェクトの説明をする矢口 優 教授
国際学部は創設から19年を迎えますが、当時から一貫して国際協力に貢献できる人材育成を行っている点が大きな特徴です。一方で、在学中に学んだことがそのまますぐに国際協力の場で、実践的に活かせる機会が提供できていなかったことが、われわれ教員の大きな「宿題」となっていました。

今回のJICAとの連携事業は、その「宿題」をやっと提出できるばかりか、学生にとってはこのプロジェクトでの派遣を目標に勉強し、実習を体験し、農家での実践を経験することがつながりをもって学ぶことができることになります。実際に、このプロジェクトで派遣される方は限られるかもしれませんが、国際学部で鍛えた知識と技術は、別の途上国での農業プロジェクトでも応用でき、また日本国内の地域振興にも役立てることができます。そうしたことに興味のある学生が増えてくれることを期待します。
拓殖大学国際学部 竹下 正哲 教授(農業分野)

拓殖大学国際学部 竹下 正哲 教授(農業分野)


ネパールプロジェクトがいよいよ始まります
※ネパールでラウテ族と談笑する竹下 正哲 教授 (中央)
ネパールとのおつきあいは、2008年に伝説の民族ラウテ族に、日本人としては初めて会いにいった頃にさかのぼります。それ以来、ネパールのキソル氏とタッグを組み、毎年調査を行っています。2012年からは、学生たちとともに行くようになり、2015年のネパール大地震の際には、学生たちが自ら募金活動をはじめ、また実際に被災地を訪問して、小学校復旧のお手伝いをしました。

そうやって徐々に培ってきたネパールとの信頼関係の中で、このような青年海外協力隊プロジェクトが誕生したことには、たいへん感謝しております。このプロジェクトは、ネパール現地のニーズから生まれたものであり、必ずや現地のために役立ってくれると期待しております。同時に、拓殖大学国際学部の学生たちにとっても、「世界の現場で仕事ができる」というたいへん貴重な機会をいただくことになります。またこれらのプロジェクトは、八王子の中西ファームや拓殖大学北海道短期大学などから多くの支援を受けて、初めて実現できるものです。ネパール、日本、双方の未来のために、工夫と改善を繰りかえしていきたいと考えています。
拓殖大学北海道短期大学農学ビジネス学科長 岡﨑 正昭 教授(農業分野)

拓殖大学北海道短期大学農学ビジネス学科長 岡﨑 正昭 教授(農業分野)


農業の基礎を培う実験・実習で自己教育力を磨く
北海道短期大学において履修する科目の中で、基幹となる科目が「農業基礎実験・実習」です。この授業は、高校で学んだ生物の知識と農業の専門知識を結びつけることを主な目的としており、実習や実験が中心となって展開します。キャンパス内にある農場での実習では、水稲、畑作物、野菜、花の種まきや栽培管理を体験します。また、種子の発芽や光合成に関する実験を行うほか、花器の構造や植物の生長過程の観察にも取り組みます。こうした学びを通して、植物の生理・生態を理解し、農業の基本的な知識や技術を身につけていきます。加えて、栽培や実験を行う中で、自ら課題を発見し、それを解決する力を養うことも大きな目標です。一方で、学生たちに身体で農業を感じてもらうために、授業外においても自分の好きな作物を栽培できる機会を提供し、指導しています。

北海道研修に参加した学生たちは、日に日に変容します。学生のほとんどは農業の実体験がないため、最初は何をしていいのかわからず戸惑っていますが、学びを積み重ねていくなかで農業の面白さや難しさを実感するとともに、自分で何をすべきかを考え、行動できるようになっていきます。また、通年履修する学生は、それぞれが研究テーマに基づく研究を日々行い、その成果を論文にまとめます。農業実践の中で学んだ成果をまとめ上げ、プレゼンする取組を通して学生が変容する姿を頼もしく思うとともに、指導できる喜びを実感しています。
拓殖大学北海道短期大学農学ビジネス学科 国際学部担当 齋藤 隆 教授(農業分野)

拓殖大学北海道短期大学農学ビジネス学科 国際学部担当 齋藤 隆 教授(農業分野)


拓殖大学北海短期大学での農業科目の体験的な学びの紹介
農業総合コースの特色であり、学びの代表科目の「農業応用演習」では国際学部専用の農場で栽培実習を行っている。前期生でも播種から収穫までの一連の農作業体験を寒冷地でも可能とする工夫をしている。例えば、育ちの早い品種を採用(ジャガイモ)し、マルチで地温を上げ、温室で育てた苗(トウモロコシ、大豆)を植え、さらに、マルチの上にビニルトンネルを張って苗の移植栽培(スイカ)で7月末に収穫し、試食まで可能である。

さらに、3年ゼミナールでは北海道で学んだ農業技術や知識習得の証として「日本農業技術検定」の3級は元より、2級試験に取り組む。2級合格は拓殖大学の報奨金の対象になる。また、北海道ならではの大規模農業の実際や有機栽培農家などの学外研修も充実している。是非、北海道短期大学で農業の科学的側面や実際を前期、又は通年で課題研究も学び、体験を通して農業分野を将来の進路選択の一助としてはどうであろうか?
八王子 中西ファーム代表 中西 一弘 さん

八王子 中西ファーム代表 中西 一弘 さん


地道な記録の大切さ
中西ファームで修行をした拓殖大学の卒業生たちが、青年海外協力隊員としてネパールに赴くことになりました。たいへん喜ばしいことであり、ぜひ現地の人のためにがんばっていただきたいと思います。

大学の授業では、栽培について多くを学んだことでしょう。でも、それは半分です。農業は作るだけで終わりではなく、その後いかにして売るかということが大切です。現地ネパールでも、どうやって売っていくか、それが重要になってくるでしょう。そのためには、地域のマーケットのニーズをしっかり把握する必要があります。どんな野菜が求められているのか、どんな販路が適切なのか。野菜のパッケージ一つとっても、工夫が大切です。どれだけ詰めたらいいのか、どう見栄えよくしたらいいのか、美的センスが問われます。求められる野菜は変わってくるので、柔軟に変化しないといけません。八王子では、最近ショウガが売れ始めています。

記録をつけることが大切です。売上げや販売の記録はもちろんのこと、暦や天気も。私はもう40年間、日記をつけています。いつツバメがきたか、いつ花が咲いたか、その日はどんな雲だったか、すべて記録しています。

農業ビジネスが成功するかどうかは、おそらく最後は「地道な評判」にかかってきます。ぜひこれまでに学んだことを活かして、創意工夫を重ねながら、がんばっていただきたいです。
学生代表 増田 春菜 さん

学生代表 増田 春菜 さん (2018年春より青年海外協力協会<JOCA>勤務)


私が国際協力を目指したわけ
私は目が見え、耳が聞こえ、話すこともでき、手足も自由に動かすことができます。これらは当たり前のことではなく、世界中にはそうでない人がたくさんいます。生まれたときから将来が決まっていて、夢を持てない人もいます。やりたいことができる自分がどれだけ恵まれているかを感じたとき、私は苦しんでいる人たちのために役に立ちたいという思いを抱きました。これが国際協力を目指すこととなったきっかけです。

国際協力の道を進むにあたって、何か自分に特化したものが必要と思い、6つのコースが選択できる拓殖大学を志望しました。今からすれば、初めは軽い気持ちで農業総合コースを選びましたが、農業を学び始めてから、農業に対するイメージが変わり、農業の重要性を肌身をもって感じました。

さらに北海道へ短期留学したことで、野菜栽培の技術だけでなく、人との付き合い方や心の動かし方、私自身初めての環境の中で、どんな人たちともうまくやっていけることができる人間だと初めて気づくことができました。

私はこれらの経験を活かし、2018年春から青年海外協力協会(JOCA)の一員として働くことが決まりました。JOCAの会長からも、「拓殖大学の農業総合コースは、青年海外協力隊に行くためにあるようなコースだね」とおっしゃっていただき、すごくうれしかったです。
そしてこのたび、JICAと拓殖大学が正式に覚書を締結したことは、本当にすごいことだと思う。私も竹下ゼミ生として行ったネパールで、新しくプロジェクトが開かれることは、とてもうれしく思います。

海外で働きたいと思っている学生に、海外で働ける道が開けたことで、これからもっともっと農業総合コースの人気が出てくると思います。そうした学生に負けないよう、私自身農業総合コースで学んだことをこれからも活かし、夢に向かって頑張ろうと思います。