FACULTY OF INTERNATIONAL STUDIES
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ネパールの状況

現地ネパールの情報

今ネパールで起きている農業問題

ネパールでは、農業がもっとも重要な産業であり、国民の68%が農業に従事しています。その農業が、今たいへんな危機に陥っています。

ネパールは、つい最近まで何百年と続く伝統的な農業を続けてきました。月や星を見て種をまく時期を決め、ローカルの種(固定種)と呼ばれる昔ながらの種を使い、牛の糞を堆肥にして、化学農薬をほとんど使うことのない農業を営んできました。

しかし、世界経済の大きな動きとグローバリゼーションの流れを受けて、そのような昔ながらの農業を続けることが困難となってきました。そこで、農家たちは現代農業に変わろうと試みました。ローカルの種の代わりにハイブリッド(F1)の種を買い、牛の糞の代わりに化学肥料をまき、安い農薬をたくさん使うようになりました。中には、遺伝子組換え作物を始める者も現れました。
ネパールのトウモロコシ畑ネパールのトウモロコシ畑
トウモロコシは、収穫した後軒下に干すのが一般的トウモロコシは、収穫した後軒下に干すのが一般的
トウモロコシの茎は、牛の餌にトウモロコシの茎は、牛の餌に
1年目はうまくいきました。いつもよりたくさんの収穫ができました。2年目からおかしくなりはじめました。数年たつと、様々な問題が明るみになってきました。まず作物の収量が減りました。農薬を使いすぎて、蜜蜂が消えた地域が現れました。蜜蜂が消えると、ハチミツで生計を立てていた人たちが困ります。さらには土がおかしくなりました。農薬のせいで害虫が強くなりました。除草剤のせいで、雑草が強くなりました。作物が腐りやすくなりました。病気になる人が増えました。奇形の子どもたちまで生まれてきてしまいました。

牛に与える餌も変わったので、牛が妊娠しづらくなりました。糞もおかしくなりました。ネパールでは、牛の糞とは神聖なもので、儀式に使ったり、燃料に使ったりします。でも、もはや牛の糞を利用できなくなったので、燃料がなくなり、代わりにガスストーブを買わなくてはいけなくなりました。ますます貧困になるという悪循環が生まれました。

ネパール全土でこのような問題が起きています。本プロジェクトのゴルカ地域も例外ではありません。このような問題を解決していくためには、農業の正しい知識が欠かせません。とくにネパールの場合は、現代農業に対しての知識が足りなかったことが、多くの問題の根幹にあります。

そこで本プロジェクトでは、拓殖大学国際学部にて「野菜の栽培技術」と「国際協力のノウハウ」を学んだ優秀な人材が、ネパールが抱えている農業問題を解決すべく、現地の人たちと一緒にとり組みます。ただ一方的に日本の技術を伝えようとするのではなく、現地の村に入り込み、ともに暮らし、ともに農業をして、現地の価値観を共有しながら、「よりよい農業の形」「農業を通した地域の活性化」をともに考えていきます。
山羊の糞を畑にまく山羊の糞を畑にまく
ネパールで販売されている農薬ネパールで販売されている農薬
実はそのとき、東京都八王子市にあるという国際学部の地の利が活きてきます。というのも、ゴルカ地域は、首都カトマンズと世界的観光地ポカラという2大都市に挟まれた位置にあります。つまり作った農産物を、大都市の巨大マーケットに運んで売ることができます。そのような農業は、「都市近郊型農業」と呼ばれます。ゴルカ地域の農家たちが期待しているのは、都市近郊型農業のノウハウなのです。八王子の農業は、まさにその都市近郊型農業に当たります。

国際学部の農業総合コースに進学すると、まず2年生で八王子の都市型農業を学びます。その後3年生では、北海道に農業留学し、大規模農業を学びます。そして4年生では、それらを応用した卒業論文を制作し、さらには八王子のプロ農家にて、実践的な修行も積みます。そのようにして養われた実践知識と経験は、ネパールの現場で多いに発揮されると期待されています。
農村の野菜集荷場 こういった現場が、都市型農業の鍵となっていく農村の野菜集荷場 こういった現場が、都市型農業の鍵となっていく
出荷されていたマメ出荷されていたマメ