HOME学部の教育教員紹介 竹下 正哲 准教授

本物の学びは体験の中にこそある

竹下-正哲

竹下 正哲 准教授

北海道大学・大学院卒業。青年海外協力隊に参加し、初めて貧困の現場にふれる。その後、自分自身が極貧に苦しみながら、小説家を目指してさまざまな職を転々とする。2011年より拓殖大学へ。

インタビュー

  • Q
    先生は大学時代にどのような学生生活を送られていましたか?
  • A
    20才の春、将来は小説家になろうと決めたので、たくさんの世界を見てやろうと色んなバイトをしました。長かったのは夜の繁華街の黒服で、他に水泳コーチ、マジシャン、着ぐるみ、森林調査員などもしました。どれもおもしろい人間模様を体験できました。また毎日4時間ぐらい空手の練習をしていて、大学のトレーニングジムが我が家のようでした。
  • Q
    そのような学生生活を送っていて、なぜ研究者を志すようになったのですか?
  • A
    なぜでしょう。僕は30才をとうに過ぎても定職についておらず、いわば「社会のレール」から外れた道を歩いてきました。自分でそうしようと選んだのですが、予想以上に険しい道で、しまいには明日のパンすら買うお金がなくなって、ホームレス寸前まで落ちぶれました。でも振り返ってみると、そのどん底の経験があったからこそ、人の苦しみが理解できるようになりました。たくさんの挫折がありましたが、挫折こそが「人生の大学」だった気がします。研究の楽しさ、ありがたさに気づいたのも、きっとそのときでしょう。
  • Q
    就職先などで何か特筆すべきエピソードや人生の転機となるような出来事があればお答えください。
  • A
    アフリカで、初めて餓死する子どもを見たことでしょう。青年海外協力隊でアフリカ・エティオピアに行ったときのことです。当時のエティオピアは内戦が終わったばかりで、町には手足を失った人たちがあふれていました。みんな交差点に座り込んでいて、信号が赤になって車が止まると、手だけではってきて、窓ガラスをとんとんと叩いて、お金をせがむんです。ショックでした。自分は世界のことを何一つ知らない、と実感した瞬間でした。
  • Q
    現在、関心を持たれている研究内容、テーマをお答えください。
  • A
    武道を長いこと続けているのですが、探求すればするほどに、過去の人が残した叡智のすごさにいつも驚かされます。研究も同じで、今人類はたくさんの問題を抱えていますが、その解決策は未来にあるのではなく、実は過去にしっかりと残されている気がしてなりません。 例えば農業を見てみると、現代農業と呼ばれるものは、実は石油漬けの農業です。ある試算によると、我々は1年間で2000リットルの石油を飲んでいることになります。石油には限りがあるし、必ず環境を破壊します。そんな農業が長く続くはずはありません。では、どのような農業がよいのか。その答えの一つとして、今ヒンドゥーの古代農法を探っています。それは聖典ヴェーダにも書かれている手法で、今年はネパールのヒンドゥー寺院に学生と一緒に泊まり込み、その一端を垣間見てきました。 そのように、失われた叡智を、農業に限らず多方面で発掘しようとしています。
  • Q
    これから国際学部に入学を希望している学生、とりわけ先生の授業を受講する学生に伝えたいこと、訴えたいことは何でしょうか?
  • A
    たぶん本当に大切なことは、ただ講義を聴くだけでは、決して身につかないと思います。すごい人を探し出して、その人の何気ない行動や言葉から、大切なことを盗み取らなくては。

    僕の武道の師匠が、そのまた師匠から瞑想の極意を学んだときのエピソードがあります。師匠がそのまた師匠とあるお寺に行ったとき、さりげなくこう訊ねたそうです。「先生は、このお寺でかなり激しい稽古をされたんでしょうね」と。すると、そのまた師匠は「いやいや、たいしたことないさ」と笑いながらも、無意識にお寺の一角に鋭い視線を向けたそうです。師匠はその視線を見逃さなかった。その瞬間「ああ、先生はあの一角を見つめて瞑想をしていたんだな」と悟ったんだそうです。

    本当の学びとはこういうものではないでしょうか。師匠のたった一つの視線から、極意を発見するといったような。そのためには、常日頃から「答えはどこにあるのだろう?」と探していなければなりません。そんな宝探しの毎日は、それはそれは楽しい世界だと僕は思うのです。

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